忘れたい、1と10。
その中で俺は少年だった。
忘れたい、1と10。
その中で俺は、言った。
「ここに居たくない」
忘れたい、1と10。
その中で誰か、懺悔していた。
忘れたい、1と10。
その中で妹は、逃げ出した。
忘れたい、1と10。
その中で俺は、懺悔を聞いた。
忘れたい、1と10。
その中で俺は、思っていた。
「ここに居たくない」
忘れたい、1と10。
彷徨って、見つけた。
暗い、部屋だった。
前に座る女の顔は見えず、
ただその懺悔を聞いていた。
妹の伯母だった女のはずだ。
妹を探して辿りついたが、
妹はすでに逃げ出していた。
ならばここに用は無いはず。
しかし俺は動けないままにいた。
なぜかその懺悔を聞いていた。
浮かぶのは二つ、
「幼い妹の木に寄り添う姿」
「ここに居たくないと言う思考」
ここに用は、ない。
心は全く焦りを知らず、
それどころか静けさを保っている。
ただ、その懺悔を聞いていた。